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■ボールスプライン事件(最高裁 H10.2.24 平成6年(オ)1083号)
 均等論の適用が可能であること及びその基準を明確にした事例
●事件の概要
 「無限摺動ボールスプライン軸受」について特許権を有する原告(控訴人・被上告人)は、被告(非控訴人・上告人)に対して、被告製品は原告特許発明の構成要件をすべて充足するか、これと均等なものとして、特許発明の技術範囲に属すると主張して、その製造、販売等の差止め及び損害賠償を求めた事件。
●裁判所の判断
 特許権侵害訴訟において、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(対象製品等)が特許発明の技術的範囲に属するかどうかを判断するに当たっては、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて特許発明の技術範囲を確定しなければならず(特許法70条1項)、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合には、その対象製品等は、特許発明の技術的範囲に属するということはできない。
 しかし、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、
(1)その部分が特許発明の本質的部分ではなく、
(2)その部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達するこ   とができ、同一の作用効果を奏するものであって、
(3)そのように置き換えることに、当業者が対象製品等の製造等の時点において、容   易に想到することができたものであり、
(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれ   らの出願時に容易に推考できたものでなく、
(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外   されたものに当たるなどの特段の事情もない、
ときは、対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。
 本件では、本件明細書の特許請求の範囲に記載された構成中に上告人製品と異なる部分が存するところ、原審は、専らその部分と上告人製品の構成との間に置換可能性及び置換容易性が認められるかどうかという点について検討するのみであって、上告人製品と本件発明の特許出願時における公知技術との間の関係についてなんら検討することなく直ちに上告人製品が本件明細書の特許請求の範囲に記載された構成と均等であり、本件発明の技術的範囲に属すると判断したものである。よって、原審判断は特許法の解釈適用を誤ったものというほかはない。